Vol.74 史幸工務店の新たな住宅性能への挑戦!

既存住宅の良好な循環を創出し、高性能住宅を建てて若い世代に住まいを繋ぐ。

2017年5月29日更新

歯止めが掛からない空き家の増加と既存住宅の低流通。

総務省の『住宅・土地統計調査』によると2003年には約659万戸だった空き家が13年には約820万戸にまで増加し、住宅総数の13.5%を占めるまでになっていることが報告されています。更に深刻なのは住宅流通に占める既存住宅の比率で、我が国の住宅流通は85%以上が新築住宅で、既存住宅の流通は欧米諸国と比較すると全くの手つかず状態です。

上図のように欧米と比較すると圧倒的に低水準であることが分かります。政府は建物状況調査(インスペクション)や住宅性能表示制度、貸し保険制度等を整備して、ストック住宅の品質向上や評価・流通の一体化に対する、仕組み造りを推進しています。

住めれば良い住宅から、若い世代に引き継ぐ高性能住宅へ。

政府は昨年3月に閣議決定した「住生活基本計画」で、住宅ストックの視点から「空き家の活用・除去の推進」「建て替えやリフォームにより、安全で質の高い住宅ストックの更新」「住宅すごろく、を越える新たな住宅循環システムの構築」の3つの目標を掲げました。  圧倒的に住まいが足りなかった戦後の混乱期に掲げられた「住宅すごろく」は住まいの確保が先決で、住宅の質や暮らし方にまで目標が及んでいませんでした。日本の住宅が欧米に比較すると圧倒的に性能が低かったのも、兎に角、雨露のしのげる住宅が最優先されてきたからです。  現在、問題になっている放置住宅の多くが、この時代に建てられた住宅で、遺族の相続放棄や高齢期を迎えた住人が、介護施設に入居して発生しています。

日本の高級住宅はスチールハウス、というギャップ。

日本のビルダーが建てる「高級住宅」のほとんどは軽量鉄骨ですが、欧米の「高性能住」のほとんどが木造住宅です。大手ビルダーの住宅が軽量鉄骨という国は先進国では日本だけの現象です。欧米では軽量鉄骨住宅は「スチールハウス』と呼ばれます。
工場生産されるスチールハウスのテレビコマーシャルが流れるのは日本だけの現象です。スチールハウスは「高性能住宅」ではないからです。100年以上住まい次がれて流通していく住宅は欧米でも木造住宅しかありません。石造りやレンガ造りの外壁でも、住宅のコアは「木造住宅」が基本です。

リフォーム、リノベーションが出来ない鉄骨住宅の現状。

国は補助金・減税制度でリフォームの実施を促していますが、実際にはリフォームやリノベーションが可能な住宅ストックは圧倒的に少ないのです。鉄骨系プレハブ住宅はリフォームが出来ません。したがって25年程度で建て替えられます。軽量鉄骨メーカの大手が木造住宅に進出しているのは偶然ではありません。住宅性能や住まい心地、省エネルギーのどれを切り取ってみても、二度と軽量鉄骨住宅はご免だ。という施主が圧倒的に多いのです。
また、我が国の木造住宅の場合も断熱・気密性能を考えないで粗製濫造されてきた為、木造住宅はリフォームを行っても欧米のように100〜200年と長期に住まい続けられる住宅はほとんどありません。
古民家と言われる江戸時代から住まい次がれてきた住宅であれば可能性はありますが、築25年程度の木造住宅ではリフォームしても10年程度の延命がやっとです。国のストック市場拡大の方針も、分からないわけではありませんが、今までの既存住宅に補助金を出すよりも、これから建てられる新築住宅にこそ補助金を出して、将来のストック市場に確実に、参入できる住宅を建てさせるべきなのです。

設備性能と住宅性能の奇妙な二極化について。

住宅の高性能化が求められ、様々な工法も導入されていますが、近年特に北欧の高断熱工法「パッシブ基準」等が、日本の気候風土に合わず、様々な問題を引き起こしています。
また、この様な施工法の問題と共に換気装置など、設備面の問題も期間蒸暑地域(期間的に熱帯降雨林並みの気候になる)である我が国の場合、熱交換換気による過昇熱(オーバー・シュート)等、様々な問題が浮上しています。これには我が国のハッキリと決められない「省エネルギー基準」の問題もあり、現在の「省エネルギー基準」は18年前の1999年の「次世代基準」がそのまま生きていたり、住宅事業主の判断基準など、様々なダブルスタンダードがあります。ZEH(ゼッチ)も国土交通省と経済産業省の基準が異なるなど、様々な混乱を来す基準が混在しています。建て主も混乱しますが、施工店の側も混乱を来しています。
2020年には「省エネルギー基準」が義務化されることが決まっています。日本の住宅もようやく欧米並みになります。

九州住環境研究会の「HERT20」モデル2棟の特別公開!

最後に、今「九州住環境」が取り組んでいる「HERT20」について紹介しておきます。
深刻化の一途を辿る地球温暖化とエネルギー問題について、その対策のために2020年の「省エネルギー基準」の義務化を見据え、住宅の「高断熱化技術開発委員会」が2009年に発足しました。
「HEAT20」はその略称・呼称です。長期的視点に立ち、住宅における更なる省エネルギー化をはかるため、断熱などの建築的対応技術に着目し、住宅の熱的シェルターの高性能化と居住者の健康維持と快適性向上のための先進的技術開発、評価手法、そして断熱化された住宅のNEB(ノン・エナジー・ベネフィット=省エネ以外の健康面などに与える便益)などを評価する国内最高の学術集団が組織する研究・開発委員会です。
九州住環境は南九州の研究組織として唯一、「HEAT20」に嘱望されて参加しています。
鹿児島市中山に「九州住環境研究会」の松下孝建設が現在「HERT20」G1・G2グレードの実験棟を2棟建設中で、南九州に最も適した住宅の実物住宅の実証試験を行っています。 構造建設中の現場から見学会を随時行って情報発信を行っています。南九州に最も適した住宅の実証実験に興味がある方は是非、ご連絡ください。建設中の実験棟にご案内致し、我が国の建築業界の英知が集まって監修している実証住宅について解説致します。