Vol.88 地球温暖化問題の現状「COP23」?

地球の平均気温上昇を産業革命以前に比べ2℃未満に抑える「パリ協定」は守られたか。
ドイツのボンで開催された「COP23」国連気候変動枠組み条約締結国会議の成果?

2017年12月27日更新

トランプ米大統領「パリ協定」から離脱表明、その結果は!

早くから予想されていたとはいえ、アメリカの「パリ協定」離脱の衝撃は大きく、各国や米国産業界からも批判が相つぎました。
「パリ協定」は気候変動枠組条約に加盟する、全196カ国全てが参加した「世界初の枠組み協定」で、参加してないのは内戦中のシリアと、より厳しい対策を求めるニカラグアだけでした。パリ協定は、途上国も応分の削減目標を持った、それこそ最初の協定で、それを主導したのは、米国と今まで途上国を代表して、先進国批判の急先鋒だった中国の協力だったのです。
今回の米国の裏切りで中国の対応次第では、途上国の大量離脱となり「パリ協定」の崩壊につながりかねない事態でもあったのです。中国は排出量を2030年までに減少に転じさせると約束しましたが、30年頃までは増加が続くと予測しています。これはトランプ大統領も指摘した点ですが、中国の経済成長も長期的見れば、現在の7%を超える水準から3~4%台へと低下すると見込まれ、国際エネルギー機関(IEA)は「二酸化炭素規制」を適切に行えば、2020年代前半に排出量が無理なく減少に転じると、表・1のように当事者の中国当局の予測よりもかなり楽観的な見通しで、30年ごろには10年代前半の水準に戻すことも可能との分析を公表しています。

これが実現可能かどうかは、中国で本格化する排出量取引で、中国は国連が管理するクリーン開発メカニズム(CDM)では世界最大の排出枠(クレジット)供給国でもあります。13年から北京市などで排出量取引(ETS)を導入し、17年までに規模の拡大を目指してきましたが、16年度までの達成率は予定の60%程度と言われています。「一帯一路」路線を掲げて、周辺国を巻き込み、しゃにむにヨーロッパ経済まで取り込もうとする中国は、今までの温暖化対策に対する発言のように、発展途上国と経済大国を使い分けることが許されなくなっています。それよりも、現実的な問題として北京や上海等、大都市の冬の大気汚染は、人が住む限界まで達し、このまま大気汚染を続けていくことは、政権の存亡にも関わる、大きな問題となっているようです。

習近平の真の実力が試される中国の環境問題?

中国経済が、更に上の「次の段階の経済成長」を目指すためには、資源やエネルギーを大量に消費する、重工業中心の産業構造からの大転換は避けられません。
「パリ協定」による削減目標の見直しで、今や「削減目標引き上げ」という切り札まで持つ中国が、アメリカと同じように、パリ協定を離脱する理由は見当たりません。
パリ協定の将来は不確実との指摘もあるようですが、世界的な「低炭素社会」への移行は、多少の揺り戻しがあっても変わらない流れになっておます。習近平の本気度と真の実力が試されているようです。
トランプ大統領は素材産業の生産減とマイナス要素だけに触れていますが、他方では、温暖化防止対策に対する、新しい技術や産業による雇用や収入増も確実にあり、旧産業を存続させる時代錯誤な昔の中国と同じ発想よりも、二酸化炭素規制を商機と捉え、本格的な温暖化対策を絡めた長期戦略を考えた方が編めるかに取っては、より大きなメリットがあるはずです。それが前任者のオバマが「パリ協定」に参加した意味だったはずです。
トランプによるアメリカの孤立化は、地球全体の問題としても脅威ではあるが、アメリカの将来に対しても大きな汚点を残したことになります。このままでは、将来、環境分野において中国に覇権を奪われると言うことになるのですから。

アメリカの産業界や州政府独自の温暖化対策で影響は軽微?

トランプ大統領の離脱表明後、アメリカの多くの州政府関係者や産業界から批判的な声が上がっています。ようやく主導権を握って、これからと言うときに、全ての決定を「ちゃぶ台返し」でご破算にしてしまったのですから、米国民の失望感も並大抵のものではなかったでしょう。
環境保護の非営利団体や組織は[We Are Still In](我々はパリ協定にとどまっている)を結成し、COP23で大型の展示・発表会場を設けて、温暖化対策の取り組みに関する講演会などを開き、トランプとその支持者以外のアメリカ人は、環境問題から離脱しないことをアピールした。
元アメリカ副大統領アル・ゴアが地球温暖化問題に警鐘を鳴らしている長編ドキュメンタリー「不都合な真実2・放置された地球」公開のため来日し、作品は11月3日、第30回東京国際映画祭のクロージング作品として上映されました。来日したゴア氏が東京・EXシアター六本木での舞台挨拶に出席し、記者会見で「トランプ大統領は、世界だけでなく米国内でも孤立し、影響力をもたなくなっている」と指摘。さらに「トランプ大統領は火力発電所の温暖化ガス排出を削減する規制の撤廃を発表したが、この規制は訴訟が起きて効力を発揮していなかったので当面の影響はない。石炭から温暖化ガスがより少ない天然ガスへの転換や、省エネ技術の普及は鈍る気配がない。アメリカが「パリ協定」に基づいて条約事務局に提出済みの、2025年に05年比で排出を26~28%減らすという目標は、達成できる」とゴア氏は予想しています。しかし、今の米国はトランプの温暖化政策を否定する人たちばかりではありません。大統領選でもトランプを支持した石炭、鉄鋼など化石燃料多消費型産業に限らず、パリ協定に縛られたくないという声も多いのがアメリカの現状でもあります。

はたして、日本の温暖化対策は充分と言えるのだろうか?

1981年イタリアのローマで行われた「ローマ・クラブ」が50年後の未来を分析した「成長の限界」において「2020年問題」を提起し、それが契機となって始まった地球温暖化対策。
我が国は全ての面で欧米各国の対策から遅れ、住環境に関しても、2020年にようやく「省エネルギー基準」の義務化が始まります。イギリスでは本年から、ZEHが義務化されるなど、我が国よりも遙かに欧州諸国の対策の方が進んでいます。自動車もイギリス・フランスは2030年までに、ガソリン・ディーゼル車の廃止を発表しています。それに比較て、我が国は、二酸化炭素削減目標も東日本大震災による原発事故により、全ての原発が停止してしまい、石炭火力発電を復活させたり新規建設で、二酸化炭素の排出を削減するどころか、逆に増やして来ました。震災から年数もたち、もはや甘えも許されない状況になってきています。ZEH(ゼロ・エネルギー・ハウス)など、今までのように低い性能基準では、建築できないレベルにまで引き上げられてきています。いま住宅を建てることは大きな責任を伴います。その責任の大半は施工店が負わなければならない問題であると弊社では認識している次第です。