Vol.204 「配偶者居住権」で老後の住まいを確保!

寿命百年時代を迎え、定年後も夫婦で老後を過ごす時間が格段に長くなっています。
長い老後を過ごすことになる「配偶者」の住居・生活費を確保する老後の暮らし。

2022年11月29日更新

2020年創設の「配偶者居住権」の利用者が増えています。

長寿命時代を迎えて定年後も夫婦二人で暮らす時間も長くなりました。「配偶者居住権」は被相続人(亡くなった人)の配偶者が自宅に無償で住み続けられる権利を保証する制度です。

夫に先立たれた妻が主に住まいや生活資金を確保しやすくするのが目的です。通常、夫の生前は不動産の権利は全て夫名義の場合が多く、夫が亡くなった場合、財産分与が発生して親子で財産分与を行うわけですが、この場合に妻が慣れ親しんだ自宅に住み続けたいと希望してもそれが叶えられないケースも出てきます。

例えば相続人が後妻と先妻の子の場合や配偶者と他の相続人の関係が良好でない場合などもあります。さらに、相続人の息子が継続しての居住を許していても、その息子に先立たれた場合なども、息子の妻や子に相続が発生し息子の場合ならば、自宅に住まい続けることを許されても、息子の妻や子の場合、許されなくなる場合もあり得るからです。

「配偶者居住権」の利用する場合の注意点。

被相続人である夫の遺言がある場合の例。

「妻に老後の住まいについての希望を聞いたところ老人ホームではなく、最後まで自宅に住み続けたいと言われ持ち家のある長男も母と同居する考えはなかったので遺言で「配偶者居住権」取得させることにしたそうです。

妻が自力で生活ができなくなった場合には、長男がこの住宅を処分して、最も適切な方法を考えてくれることを話し合われたということです。

「配偶者居住権」を使う場合の注意点。

遺言や遺産分割協議で配偶者が居住権を取得した場合は、法務局(登記所)で居住権の設定登記を行う必要があります。これを怠ってしまうと「第三者に権利を主張する」ことはできません。登記をしない場合、例えば、子供が建物の所有権を売り払ってしまい妻が住み続けられなくなる場合もあります。登記は、住居権を持つ妻と、所有権を持つ子が共同で申請しなければなりません。

「配偶者居住権」も相続税の課税対象のため価値の計算が必要。

配偶者と子が相続する1次相続の場合、相続税がかからない場合でも、遺産相続を公平にするには、評価額を知る必要があります。配偶者居住権の評価は建物と土地の評価や建物の築年数、配偶者の年齢などが手掛かりになる複雑な計算が必要なために税理士などの専門家に依頼するのが現実的です。

登記後も配偶者居住権は、放棄したり解除することはできますが、配偶者が亡くなるまで権利を持ち続けることが基本で、生前に居住権を放棄したり、子も合意の上で居住権を解除する場合は「妻から子に贈与があったとみなされ、子に贈与税が課税される場合もあります。

考えられるケースは、妻が老人ホームに入居するなどして資金が必要になり、自宅の売買が必要になるケースです。当然、配偶者居住権が設定されされたままの自宅は売却が難しくなりますが、配偶者居住権は自宅に居住しなくなっても持ち続けられますから税金の面からはなるべく居住権を手放さないで済む方法を考えた方が家族にとっては賢明な考えになります。

「配偶者居住権」の利用拡大は相続税の節税対象もある。

配偶者の保護を目的とする制度のため「配偶者本人が亡くなった場合権利は消滅する。」そのため配偶者が亡くなった場合の2次相続では、居住権は課税対象になりません。

例えば夫の遺産が自宅6000万円と預金2000万円で、配偶者居住権を使わず妻と子1人で半分ずつ(自宅3000万+預金1000万円)を相続した場合、この1次相続の時に小規模宅地特例などで相続税がかからず、その後も財産額が変化しなかった場合、2次相続では、妻が相続した4000万円分が課税対象となる。基礎控除3600万円(3000万円+600万円X法定相続人数の1人)を上回り相続税がかかる。

これに対し、1次相続で配偶者居住権を使い妻が配偶者居住権2500万円と貯金1000万円、子が家の所有権3500万円と預金500万円を相続したとすると、この場合2次相続での課税対象は預金1500万円だけなので相続税はかかりません。このような「制度の趣旨にそぐわない節税対策」の側面もありますが、できるならば趣旨に沿った配偶者の幸せを考える「配偶者居住権」として考えてほしいものです。

史幸工務店は、皆様の幸せを考える住宅づくりを心がけています。ご夫婦の老後を考える「ついの住処」についても是非、ご用命賜りますようお願い申し上げます。