史幸便り
Vol.17 HEMS(ホーム・エネルギー・マネージメント・システム)とは何か?
HEMS等という見慣れない言葉が新聞紙上をにぎわせているが、どんな意味があるのか?
2011年12月27日更新
■「スマートグリッド」という考え方。
3月11日の震災以来、やたらと横文字が増えて参りました。新しい住宅思想を語るためには、我々工務店が横文字を克服しないと前に進めないようですから、今回は横文字の解説から行いたいと思います。まず、スマートグリッドという言葉を解説してみましょう。
スマートグリッドとは、現在の系統電力(東京電力等の既存電力)の枠にとらわれず、新しい地域開発の手段として、スマートシティーやスマートタウンを開発し、そのエネルギー源を、例えばガスタービン発電などを中央に据えて、家庭では再生可能エネルギーである太陽光発電やエネファーム等の燃料電池で賄い、系統電力から切り離した双方向の電力を融通しあって地域で使用するというものです。
この様な考え方は、脱原発、二酸化炭素の削減や炭素燃料支配から脱却できる方法として考えられており、次世代送電網=スマートグリッドと呼ばれています。スマートグリッドの普及が意味するところは、例えば、山間部の村などが、送電線に頼らなくても、水車や風車などの自然エネルギーで発電を行い蓄電池で蓄電し、各自の屋根に取り付けた太陽光発電や近くの小川で独自に発電した水力発電の電力を融通しあうという方式です。
■エネルギー・マネージメント・システムとは、どんなことなのか?
地域発電所の役割を工場などが担う場合もあります。スマートグリッド(次世代送電網)と情報通信技術(ICT)を活用して地域の電力をマネージメントするのがEMS(エネルギー・マネージメント・システム)と呼ばれるシステムです。この場合、スマートグリッドの末端に位置するのが、一般家庭で、太陽光発電などの発電装置を装備し、情報通信技術の端末が装備された住宅をスマートハウスと呼びます。スマートハウスでは、各家庭のエネルギー使用状況が詳細にコンピュータ管理されて、スマートグリッド内の電力事情が集積管理され、最適制御で足りない部分は、地域発電所で発電供給することになります。
■エネルギーの消費量を「見える化」して管理。
スマートグリッドは、現状の系統電力や再生可能エネルギーも取り込み、需要関係の全てを一元管理し、発送電の効率化を図り、地域ぐるみで省エネ効果を生みます。一般家庭のスマートハウスでは、パソコンやモバイル端末から自宅のエネルギー使用状況や蓄電状況が確認できます。入出力電力が各種センサーやスマートタップによって情報収集装置に集められ、それを情報端末のスマートフォンなどで確認できるわけです。この様に電力の「見える化」によって、無駄な電力の使用が抑制され、省エネ意識が高まるばかりか、創エネ、築エネ意識も高まります。その家庭用の中核技術がHEMS(ホーム・エネルギー・マネージメント・システム)ということになります。
■省エネ管理が進んでも最も重要なのは住宅の性能。
家庭の中に先端技術が入り、遠隔管理も自由に出来る時代になって参りますが、どんなにエネルギーを造り出しても、住宅性能が悪ければ、エネルギー消費はそれだけ増えてしまいます。最も重要なのは、やはり住宅性能です。それは政府も認識済みで、長期優良住宅などの住宅寿命を出来るだけ長く保つ住宅の施工を奨励していますが、現実的には、まだまだ高性能住宅と呼ぶに相応しい住宅は増えていないのが現状です。そのために、来年度の後半から住宅性能表示制度が開始され、住宅の性能に合わせてラベルを貼る、住宅ラベリング制度も開始されます。昨今のEV(電気自動車)の進歩で、家庭用蓄電池の開発も既に実用段階に入っています。また、蓄電池の替わりにEVを活用する等の方法も、実用化段階に入っています。