史幸便り
Vol.51 乳幼児のくる病と高齢者の骨粗鬆症!
有害な紫外線には、人間の骨の生育に必要なビタミンDを人体で製造する役割があります。
NHKの報道番組や新聞紙上で「くる病」の20年ぶりの増加が報道されています。
2015年4月27日更新
■くる病の増加の原因はお母さんのUV対策?
20世紀初頭に、イギリスに多かった「くる病」の原因が曇天が続くイギリス人の日光不足であることが分かりました。
日光の(紫外線)が皮膚に当たり皮膚下で化学合成され生成されるホルモンのビタミンDが「くる病」を予防することが発見され、わが国の母子手帳でも乳幼児の日光浴が奨励され、母親は子供を当たり前のように日光浴をさせたものでしたが、1998年以降は母子手帳から日光浴の言葉が消えて、外気浴になりました。
それは、1980年代のオゾンホール発見からオゾン層の破壊が顕在化して以来、紫外線は有害であるとの考え方が浸透し、太陽光をなるべく浴びないようにするという風潮が広まってきたことも、近年のビタミンD不足の一因と考えられます。特に女性は、紫外線がシミ・しわの原因になるなどとして、美容上の観点から紫外線を避ける様になりました。
しかし研究者の話では、このビタミンDは、母乳を含め地球上の食品では必要量を補うことが出来ない仕組みになっているようです。
■なぜ、紫外線でビタミンDを造る必要があるの?
ビタミンDには、過剰症という逆効果があり、ビタミンDを多く含む食品には食物アレルギーの原因物質が多く、食品でビタミンDを過剰に摂取して過剰症を起こさないための自然の摂理が働いているからです。
医学的には、ビタミンDはカルシウム代謝調節作用と細胞分化誘導作用があり、カルシウム代謝に必要なビタミンDを生成すると同時に、細胞分化に関わるビタミンD関連化合物が生成され、ビタミンDを食品やビタミンD製剤だけで補うと、カルシウム代謝と細胞分化誘導作用の両作用の調節ができなくなり、常に過剰症と欠乏症に陥ることになり、過剰症も欠乏症どちらも身体には重大な疾患となると指摘しています。身体に必要なビタミンDは、食品と共に日光浴による自分の体で生成するのが自然で乳幼児ばかりではなく、高齢者の骨粗鬆症も同じように日光浴不足が指摘されています。
■過剰な紫外線の摂取は人体に有害です!
紫外線は過剰に浴びると人体に有害となることが知られていますが、ビタミンD生成のための紫外線量と有害と考えられる紅斑紫外線量双方の関係について国立環境研究所では、紫外線によるビタミンD生成という健康に対する有効性と、皮膚に紅斑を生じさせるという有害性の研究から、具体的な日光照射時間の数値を公表しています。
基準都市は札幌・つくば・那覇になっていますので、鹿児島の場合は、那覇の日照時間が基準になります。
世界保健機関(WHO)は、敏感な肌を持つスキンタイプの人に対して、200J/㎡の紫外線量を、最少紅斑紫外線量(MED:Minimal Erythermal Dose)として定義しています。この量(MED)以上の紫外線を浴びると、人によっては何らかの形で皮膚に直接的な影響が現れ、さらにはその蓄積によって慢性的な障害が出るとされています。
日本人に多いスキンタイプIIIの人が、顔と両手の甲の面積に相当する600c㎡を露出させたときに、10μgのビタミンDを晴天日に生成するのに必要な日光照射時間を求め他のが上記表です。
表1は10μgのビタミンDを生成するのに必要な時間、表2は皮膚に直接的な影響が出始める時間です。これらの時間はスキンタイプIIIの人に対応したもので、皮膚の色が白いスキンタイプIIの人はこの表に載せた値の0.83倍、皮膚の色が濃いスキンタイプIVの人は表の値の1.5倍を目安にする必要があります。
表1.10 μgのビタミンDを生成するのに必要な時間
7月 | 12月 | |||||
---|---|---|---|---|---|---|
9時 | 12時 | 15時 | 9時 | 12時 | 15時 | |
札幌 | 14分 | 8分 | 24分 | (904分) | 139分 | (4985分) |
つくば | 11分 | 6分 | 18分 | (193分) | 41分 | (493分) |
那覇 | 16分 | 5分 | 10分 | 142分 | 14分 | 31分 |
表2.皮膚に直接的な影響が出始める時間
7月 | 12月 | |||||
---|---|---|---|---|---|---|
9時 | 12時 | 15時 | 9時 | 12時 | 15時 | |
札幌 | 39分 | 25分 | 64分 | (714分) | (227分) | (1667分) |
つくば | 32分 | 20分 | 52分 | (313分) | 98分 | (625分) |
那覇 | 46分 | 16分 | 29分 | 294分 | 42分 | 86分 |
表の中の( )で囲んだ数値は、長すぎて現実的ではない計算値を示します。
■住宅のUV対策は、開口部のガラス性能。
紫外線についての有効性と有害性について述べましたが、乳幼児のための照射時間は夏の15時の場合でも鹿児島では一日10分程度ですから、そんなに大変な事ではありません。紅斑病に対しては、15時の場合で29分ですから危険度が大きいようです。住宅の窓が大きいと紫外線の危険を心配される方が多いのですが、史幸工務店では 紫外線を無害化するLoWーEガラスを標準装備にして有害な紫外線をカットしています。その性能は、UVカットサングラス並みですから、窓辺で幼児を日光浴させても全く問題はありませんし、窓を開けて適当な時間帯に10分程度の日光浴をさせてあげれば「くる病」の心配もなくなります。大気汚染によるオゾン層の破壊以来、紫外線の問題が話題に上がりますが、史幸工務店の開口部は温熱環境と紫外線対策にも充分に対応しています。