Vol.84 地震災害は基礎や温熱環境の選択で軽減!

天災は忘れた頃に来る。喉元過ぎれば熱さを忘れる。諺が語る経験に従うべし。
必ずやってくる「南海トラフ大地震」住宅を新築するなら忘れてはならない災害対策!

2017年10月23日更新

熊本地震が学習させてくれた、耐震対策の重要性!

少し前に「省エネ基準」の義務化に伴う耐震性能の『既存不適格』について述べましたが、今回は熊本地震から学んだ耐震対策について述べてみたいと思います。
1981年に「建築基準法」が改正され、それ以前を『旧耐震』、それ以降の耐震基準が現行の「新耐震基準」です。熊本地震では、旧耐震に属する住宅は倒壊してしまいましたが、新耐震の建物は、深度6〜7程度の地震でも倒壊による死者を出さないという設計基準通り、直下型地震地域以外では、ほとんど倒壊は免れ、最低限の耐震性能は維持できたようです。
熊本地震では、地震が直接的な原因で亡くなられた方は50人ですが、震災後に避難先で亡くなられた方が200人以上に渡り、現在もなお増え続けている状況です。住宅は災害時に命を守るだけでは足りないと言うことが分かって来ました。若い方ならまだしも、高齢者の場合は住宅の再建も難しく、将来に対する絶望的な雰囲気が命を削っているようです。

最も重要なのは基礎の強度、耐圧盤配筋「ベタ基礎」の施工。

耐震性能と基礎の関係

図・1は、①最も一般的な布基礎構造、②耐震構造、③制振・免震構造の3種類の耐震構造です。
2020年の「建築基準法」の改正では、木造住宅の耐震性の向上が盛り込まれて、家を建てる前に地盤調査を行って、地盤が弱い場合は基礎杭を打ったり、ベタ基礎を採用する事が義務づけられています。
①の布基礎は、外壁の下だけを鉄筋コンクリートの布基礎を施工するだけなので、地盤のズレや液状化には対応しきれず住宅が倒壊する危険性があります。
③の制振や免震構造の場合は、基礎も耐圧盤布基礎構造の「ベタ基礎」が採用されている場合が多いようですが、様々な器具を採用するために独特な基礎を施工する場合も有ります。しかし、免震や制振は、鉄骨造りの大型建物用に開発されており、壁紙や塗り壁で施工される木造住宅では、建物が動く事で様々な弊害が出てしまうので、地震の後始末が大変になってしまいます。壁の中に設置される機器のの耐用年数、メンテナンスなど様々な事を考えれば、一般住宅では、もっとシンプルな方法で耐震や災害対策を考えた方が良さそうです。

②の耐圧盤配筋布基礎「ベタ基礎」をお勧めします。

耐圧盤とは基礎内部のことでこの基礎内部にも布基礎部分と同じように配筋して、基礎全体を配筋して舟のような構造に仕上げます。住宅の基礎全体が一体化しますから地震などで揺れる場合にも、海に浮かぶ舟のようにバラバラではなく、一体化して同じ方向に動きます。
住宅は基礎と土台がアンカーボルトで確りと、緊結されていますから、基礎から屋根のてっぺんまで基礎の動きに合わせて同じように動きます。
熊本地震でも基礎の底面全体を鉄筋コンクリートで支える「ベタ基礎」は大きな揺れから住宅を守り、活断層の真上でも「ベタ基礎」の住宅は、ほとんど損傷がなかったことが報告され「ベタ基礎」の有効性が証明されています。
耐震性を考えるのであれば、地盤に問題が無くとも、布基礎で納めるのではなく、耐圧盤配筋「ベタ基礎」での施工をお勧めします。

最も重要な「耐震性能」と「温熱環境」の関係。

耐震性能について基礎の造り方や構造強度など、物理的に重要な部分はセオリー通りに施工されたとしても、それよりも、もっと重要なのは、住宅の劣化による耐震性能の弱体化や住宅寿命の短命化です。
温熱環境と耐震性能等の住宅の劣化には、非常に密接な関係があります。それは結露と白蟻の問題です。適切な温熱環境は、我々人間の快適な生活に必要なのではなく、住環境そのものの長寿命化に、最も必要な事です。結露が頻繁に発生している住宅は、構造材等、目に見えない部分の劣化を早めています。更に白蟻や腐朽菌の被害を受けている危険性があります。
耐震性能を盤石にするためには、温熱環境を高めて、結露の発生を完璧に防ぐ必要があります。カビの発生もダニの発生も、結露が発生する室内環境に原因があります。
住宅の高耐久性能は、金物などを多用して強度を高めることによって生まれるのではなく、温熱環境の高性能化によってのみ生まれます。
快適な「温熱環境」の住宅は、地震などの自然災害から我々を守るだけではなく、省エネルギーで生活でき、カビやダニなどの被害を受けない、住宅も人も健康な環境でもあるのです。

本当の強度を知るためには材料に惑わされない?

住宅の強度は、素材の選択や施工法によっても影響を受けます。金物と木材と言うように、強度の異なる素材を緊結しても揺れ動くと、弱い方が負けてしまうのは明らかなことですし、様々な矛盾する素材が使用されていますが、本当にそれを使う意味を理解して使っているのか、疑問のあることも多くあります。
昔から使用されてきたシンプルな素材が原点だと思います。
下表・1は「地震保険」の割引制度です。地震保険は火災保険とのセット加入が原則で、保険金額は火災保険の二分の一が限度。耐震等級1は「建築基準法」の基準で、等級1には阪神淡路大震災でも倒壊しない強度が求められます。がんじがらめの等級3は、必要かどうか?お勧めするのは、耐圧盤配筋「ベタ基礎」で施工することです。

地震保険の割引制度(出展:財務省)