史幸便り
Vol.190 住宅ローンの固定型と変動型の違い!
円安基調が定着しつつある現在、金利はすぐには上がらないが35年の長丁場を考える!
金利上昇やリスクに違いが、一方的な見方ではなく将来展望も必要に。
2022年4月27日更新
「固定型」金利の上昇が続いている現状の分析。
先月に引き続き、今月も住宅資金の金利動向についてお伝えしたいと思います。
円安傾向が続いており金融機関が住宅ローンの金利を引き上げる動きが目立っています。ローンの種類によって動向が異なりますから、その特徴を知っておかれる必要があります。
なぜ、住宅ローン金利が引き上げられる傾向になっているのか理由から考えて見ましょう。住宅ローンには主に3種類あります。1・全期間固定型と2・固定期間選択型、3・変動型の3種類です。
1の「全期間固定型」は、「フラット35」等のような返済の全期間完済するまで金利が変わらないローンです。
2の「固定期間選択型」は、当初の一定期間、金利も一定で、その後に、新規金利に移行する金利タイプです。
3の「変動型」は、半年ごとに、その時々の金利動向で金利を見直します。
主に2月以降に上昇している金利は「全期間固定型」や「固定期間選択型」で、固定期間が10年というような長期間、金利が一定のローンです。
ロシアがウクライナに侵攻し、石油・ガス危機が叫ばれるなど、国際関係にも影響を受けておりますが、それに連動して我が国の20年に渡る「円安誘導」も実体経済に合わなくなっているのも一因といわれています。
なぜ、長期金利が上昇しているのでしょうか?
住宅ローンの金利は、各金融機関が市場の金利等を参考にして決めます。
固定型の金利は債券市場の国債利回りなどを参考にして足元で長期の国債の利回りが上昇したことを反映しました。大手銀行の「全期間固定」の適用最優遇金利は年1.2〜1.8%程度ですから比較する時期やものによっても異なりますが、まだまだ割安な水準といえるようです。
金利差は将来の金利上昇リスクを避けるためのコストに当たります。
「変動型」の住宅ローンから「固定型」への借り換え。
5年前に4000万円を期間35年0.625%の「変動金利」で借り、月返済額10.6万円ずつ返済している場合、残債額約3500万円を現時点で1.15%の「全期間固定」に借り換えると月返済額は11.8万円、残債の総返済額は約4240万円になります。いずれも現在よりも増えますが返済負担は市場金利が今後上昇しても変わりません。
借り換えずに「変動金利」が借り入れから10年経過後に上昇した場合、変動型の基準金利が過去の平均値である3.683%に上昇すると基準金利からの引き下げ幅は、完済まで変わらない仕組みなので適用金利は1.833%になり、月額返済は12万2千円、返済総額は4310万円と全期間固定よりも膨らみます。「変動金利」が過去の平均値まで上昇するとはかぎりませんが、金利上昇リスクにある程度備えながら金利動向を見極める場合は「固定金利選択型」の選択肢もあります。
「変動型」の住宅ローンの動向は、まだ変更無し。
「変動型」の金利は、現状では変動していません。これは日本銀行が低金利政策を変更していないからです。低金利の流れは黒田日銀総裁の任期終了となる来年まで継続する可能性が非常に高くなっています。
大手銀行の変動型は、短期プライムレート(短プラ)と呼ばれる金利に1%を上乗せした水準を基準金利としています。かつてこの短期プライムレートは、各銀行が公定歩合に連動した金利をもとに、信用リスクの大きさに応じて上乗せ金利を付け加えて決めてきましたが1989年以降は、公定歩合ではなく譲渡性預金(CD)などの市中金利に連動して決めるようになり、現在では「新短期プライムレート」(「新短プラ」)と呼ばれ一般的になりました。
プライムレートは、銀行が企業に貸し出す際の金利なので、一般の人には関係ないと思われるかもしれませんが、住宅ローンの「変動金利」は新短期プライムレートに連動して決められており「新短プラ連動型」の住宅ローン金利は「新短期プライムレート+1%」というのが一般的ですが、金融機関によっては差別化を図るため、新短期プライムレートにコストや利益分をプラスして金利を決定しているところもあります。
2009年以降、短プラは年1.475%で変化がなく銀行間の競争で、基本金利からの引き下げ幅が変動型の適用金利が年0.5%を下回る場合もあります。ウクライナ情勢などでかなり大きな変動がなければ、日本国債等に与える悪影響から、日本銀行の低金利政策の継続で金利引き上げはできないので、あまり慌てる必要は無いものと考えられます。
「固定型」と「変動型」の金利差の決まり方の違い!
金融機関は預金などで集めたお金を企業や個人に融資したり企業に投資するなどして利益を得ています。基本的には、預金者に支払う金利や融資先に貸し出した金利の差が利益になります。
金利は経済情勢で変化します。金融機関が住宅ローンを低利に設定しすぎると損をしますから、それを防ぐために市場金利の動向を見極めて他行との競争にも勝てるような金利を設定します。
特に住宅ローンの場合は、35年という長期的な取引になりますから、返済期間中に金利が変動するリスクが問題になりますが、全期間固定の場合は債権者の返済額は、金利が上昇しても変わりはありません。
変動型の場合は、半年ごとに金利が見直されます。金融機関から見ると固定型は金利上昇リスクを銀行が負い、変動型は債務者が負います。
固定型と変動型、利用が多い方はどちら?
住宅金融支援機構の「実態調査」では、最も多いのが変動型です。2021年10月の調査では67%が利用し、5年前の調査でも49%で上昇傾向にあります。金利が低いために変動型を選ぶ人が多いようですが、専門家も「日銀の政策が変更にならない内は変動型の金利がすぐに上がることはない」と言います。
変動型は金利上昇時に借り換えなどの対処が可能な方。固定金利型の金利は、将来の金利上昇リスクの心配を避ける「保険料」として考えれば、どちらを選択しても、あとで後悔する事も少ないように思われます。貴方はどちらにされますか?