史幸便り
Vol.216 「放置住宅・土地問題」の抜本対策開始。
社会問題化している「放置住宅」や「所有者不明土地対策」の解決を図る民法改正の三本柱が本格的に動き出す。
相続人が財産の分け方を話し合う遺産分割協議に10年の期限を設ける改正民法が施行!
2023年5月31日更新
国の所有者不明土地対策が本格的に動き出した。
所有者不明土地とは、不動産登記簿を見ても誰が持ち主なのか判らない土地のことで、近年(表・1)のように年々増加傾向を示し「放置農地や住宅」なども、未相続のものや土地所有者不明のために、対処できないものが多く、社会問題化しています。
「政府は、所有者不明土地対策として位置づけてきた3本柱、(表2)の民法改正・相続土地国庫帰属法・改正不動産登記法を施行させて対策に乗り出しました。相続人が財産分与を話し合う遺産分割協議に10年の期限を設ける民法改正が4月1日から始まり、不要な土地を国が引き取る相続土地国家帰属法が4月27日より開始、土地建物の登記を義務づける改正不動産登記法も2024年4月に施行されることが決まっています。
「親の家や土地を相続するか、しないのか、処分するかなど」決めないままでいると今後は、思わぬ費用負担が発生しかねないので注意が必要です。
所有者不明土地の発生は、被相続人が亡くなり、相続が発生したときに相続人が名義変更をしないで、長期にわたって放置することで発生します。
学識経験者などで構成する「所有者不明土地問題研究会」によると、全国の所有者不明土地の面積は2016年時点で410万ヘクタールと九州の面積を上回り、2040年には、720万ヘクタールに及ぶ見通しで、都市再開発や公共事業の土地買収の妨げになったり、廃棄物の不法投棄現場になるという深刻な問題になっているため、この度の民法改正に踏み切られました。
遺産分割協議に10年の期間設定をもうける。
相続開始から10年過ぎても分割協議がまとまらない場合は、原則として法定相続割合で分割されます。遺言のない場合は、民法で定めた財産の分け方「法定相続分」で分ける場合、例えば配偶者と子1人の場合は、2分の1ずつ、配偶者と子2人の場合は、配偶者2分の1と子が、4分の1ずつとなります。相続人全員が合意すれば法定相続分とは異なる分け方でもかまいません。
問題なのは相続人の中に生前贈与を受けたり故人の生前に医療費や介護で多大な貢献をした人がいる場合で、特別受益や寄与分を踏まえた公平な分け方が理想的ですが、相続開始から10年を経過した場合は、特定受益や寄与分を認めないで、法定相続での分割方式になります。不服な場合は、期限内に家庭裁判所に調停・審判を申し出ることが可能です。
相続した土地を国に引き取ってもらう場合。
第3の柱となる「相続土地国庫帰属制度」の利用は、国に土地を引き取ってもらうことです。
利用希望者は、土地のある都道府県の法務局に申請し、土地が申請段階の条件を満たしていれば受理されますが、条件は利用申請時と法務局による審査時の2段階があり、それぞれ5つの条件があります。申請時に建物があると申請は受け付けません。解体・撤去が必要で、費用は自己負担です。担保権が設定されていたり、隣地との境界が不明確で争いがある場合も却下されます。
審査段階では、土地に庭木を含む樹木や石灯籠などの工作物も解体撤去が必要で、除去が必要なコンクリート片が埋まっていたりすると認められません。地割れや陥没がある場合も承認されません。全てクリアして引き取りが決まったら申請者は管理費相当額として一定の負担金を治める必要があります。
具体的には、宅地、農地、森林といった土地の種類や面積ごとに決まります。例えば、都市計画法の市街化区域にある宅地で面積が「100平方メートル超200平方メートル以下」なら「面積×2450円+30万3000円」で算出します。
市街化区域外にある宅地の負担金は面積にかかわらず一律20万円となっています。
煩雑な手続きのため法務局の事前相談の活用を。
法務省によると、全国の相談受付件数は、3月末までの約1ヶ月間で1500件に達する相談が寄せられ、土地の種類は農地が約4割で最も多く、宅地が3割、森林が2割の割合だと言うことです。
住宅の新築計画時には様々な問題が噴出してきます。今回は遺産分割協議が10年になった民法改正についてお知らせしました。
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